営業部員の94%がDomoを活用。Excel文化からデータドリブンな営業組織に変革し、持続的な成長を目指す
1. ビジネス背景 : 持続的成長に向けた抜本的な構造改革を実施
2020年度を構造改革フェーズとして、その前年にデジタルイノベーション推進室を設立。外部から人材を登用し、DX推進をはかる。ノーリツの流通構造は複雑で、これらを効率化する必要があった。
2.課題 : 手動によるレポート作成と勘と経験に頼った営業活動
Excelを使ったデータ管理が中心で、マスターデータを各自編集して利用しているので、精度が異なる上、レポート作成の工数も負担となっていた。勘と経験に頼った営業活動が行われており、データが事業改善に活かされていなかった。
3. Why Domo? : Excelに近い感覚で、ノーコードで使えるDomo
Excelに近い感覚で使えるDomoは社内に定着しやすいと判断。統一指標がタイムリーに共有できることで、営業のデジタル推進ができると期待。導入決定後は、手厚いサポートにより、ノウハウを蓄積できた。
4. 定着化 : ダッシュボードから理解を深め段階的な定着化を図る
先にダッシュボードを作成し、使い方のイメージを具現化。営業所ごとにオンラインの説明会を実施し、Domoの活用意義を伝える。各営業所に「Domoサポーター」を選出し、導入を推進。Excel文化からデータドリブン文化へと移行。
5. 導入効果 : ボタン一つでレポート作成が可能になり、業務効率化を達成
営業のレポート作成がボタン一つで可能になり、業務効率化により残業時間が削減できた。営業部の1on1ミーティングでも、SFAからのデータを踏まえたアドバイスが可能になり、質の高い改善活動ができるようになっている。
1. ビジネス背景 : 持続的成長に向けた抜本的な構造改革を実施
ノーリツでは、企業価値向上に向けた収益力強化と体質改善を目的として、2020年度を構造改革フェーズとして、事業の取捨選択、コスト削減などを実施しました。その準備として2019年にデジタルイノベーション推進室を発足しています。並木氏は、この新しい部署のトップとして入社しました。2020年にSFA(営業支援ツール)を導入し、日報のデジタル化を開始しています。「経営層に、既存事業を継続するには、抜本的な構造改革が必要だという危機感がありました。そのため、外部から人材を採用して、デジタル化を推進することになったのです」と並木氏は話します。
なお、ノーリツの流通構造は、販売代理店を経由するケースが多く複雑です。販売代理店は、ガス会社のグループ会社の店舗などの他、工務店、建材会社、ハウスメーカーなどもあり、商材によっては直接販売することもあります。全国にある営業所は、地域の実情にあわせて担当を分担して営業活動を行っています。営業部門には約500名の従業員がおり、顧客を訪問する外勤担当者と、外勤担当者を支援する内勤担当者で分かれています。
2.課題 : 手動によるレポート作成と勘と経験に頼った営業活動
同社の課題の一つがExcelを使ったデータ管理です。販売管理・在庫管理のシステムから出力したExcelデータが、社内イントラに公開されていました。営業担当者は、このExcelをダウンロードして、自分の担当する営業先に必要なデータを抽出し、レポートにまとめて得意先に提出していました。「ダウンロードしたExcelは各自で加筆・修正してレポート化するので、それぞれ異なる数値を見ていましたし、集計でミスがあれば間違った数値で報告されてしまいます。営業部門は日商で管理するべきですが、全体の売上は月末にならないと集計されず、月末や四半期近くになると慌てるということもありました」と並木氏は当時の課題を振り返ります。営業担当者が、予算に対しての実績をリアルタイムで確認できるような仕組みが必要だったのです。
営業の現場経験が長い吉川氏は、外勤者が内勤者に依頼をしてレポート作成をしており、内勤者の時間外労働が常態化していた実情を明かします。外勤者が翌日に必要なレポートを前日の夕方以降に依頼することもあり、内勤者に負荷がかかっていました。
「会社全体の傾向として、勘と経験に頼った営業をしており、データを活用した分析や課題解決につなげる習慣がありませんでした」と吉川氏はもう一つの課題を説明します。特に営業活動はデータ化ができていませんでした。SFAを入れたものの、日報をテキストで記録して蓄積するだけにとどまり、振り返りや改善に活かせていなかったのです。
3. Why Domo? : Excelに近い感覚で、ノーコードで使えるDomo
並木氏は着任してすぐの2020年7月からBIツールの選定を開始しました。小規模のツールベンダーの場合、サービス提供が利用中に終了するリスクがあるため、ある程度の規模があり信頼できるツールを中心に選定を行いました。
「DomoはSQLの知識は不要で、Excelのピボットテーブルが扱えれば十分に使える点が、他の分析ツールとの大きな違いでした」と並木氏は話します。自走して運用することを想定していたため、Excelに慣れている同社の従業員にとって、Domoは使いやすいツールだと感じました。Domoの導入により、統一した指標がタイムリーに共有できるようになることで、営業のデジタル推進ができると考えたのです。また、並木氏は個人的にDomo創業前のJosh Jamesにも注目しており、前職では製品を活用していたことも後押しになりました。
経営層に導入を提案したところ、スムーズに承認され2020年12月には契約を行いました。
導入後は、ドーモのコンサルタントがデジタルイノベーション推進部に対して勉強会を開催し、ダッシュボード作成について伝授しました。「基本的な活用方法の解説から、実データを使ったカード作成まで手厚いサポートがあり、大変有効でした。その後はさらに、ドーモのビジネスパートナーによるサポートがあり、一緒にダッシュボードを作成しながら、社内にノウハウを蓄積しました。スピード感を持って進められたので非常によかったです」と並木氏は話します。
4. 定着化 : ダッシュボードから理解を深め段階的な定着化を図る
Domoを導入して最初に経営層向けのエグゼクティブレポートをダッシュボード化しました。営業の売上、売価などを産業分野別に算出し、強み・弱みを把握できるようにしました。ポイントは、過去に使っていた経営会議資料とフォーマットを一致させたことです。これにより、違和感なくDomoに移行でき、常に最新のデータを見られるようになりました。
続いて営業部門向けのダッシュボードを作成しました。業務の基幹システムと連携させて、販売台数、出荷台数、営業の売上、各種経費が見られるようにした他、SFAとも連携し営業活動もデータで確認できるようにしました。「アウトプットのイメージができないものを理解するのは難しいので、まずは見る人に合わせたダッシュボードを作成しました。ダッシュボードからDomoの理解を深めてもらいました」と並木氏は述べます。
営業部門の展開にあたっては、営業所ごとにオンラインで説明会を開催し理解を得ました。使い方だけでなく、Domoを活用することでExcel集計のヒューマンエラーがなくなること、内勤者の業務削減ができることを伝え、活用の動機づけをしました。そして、営業所ごとに、「Domoサポーター」と名付けたキーマンを選出し、Domoの推進者としました。合計16名のDomoサポーターは、30代の実務担当者が中心で活用を推進しています。
なお、営業部門から依頼のあったデータは、すべてデジタルイノベーション推進部にてDomoのダッシュボード上で見られるように設定しています。現場からの要望に丁寧に対応することで、現場で使いやすい状況を作りました。
さらに、兵庫支店には、デジタルイノベーション推進部の担当者が出張して、支店のページ作成をサポートし活用を促進しました。兵庫支店は、全国の支店長が集まる支店長会議で、活用方法を発表しました。この会議には社長をはじめとした経営陣が参加しており、常務が全員の前で称賛したことで、他の支店長のモチベーションを高めました。その後の総務会議でDomoサポーターが具体的な活用方法を説明しました。このように、支店長会議、総務会議をかけ合わせることで、成功体験を浸透させていったのです。
ただ、なかなかExcel文化から脱却できない人もいました。そこで、並木氏は思い切った作戦にでます。それが、イントラに公開されているExcelを下すことです。Excelのマスターデータにアクセスできないので、Domoを活用する他ない状態にすることで、半ば強制的に切り替えを行ったのです。「実は完全に移行するのは無理なんじゃないかと思っていました。しかし、並木さんのやり方を見てある程度、強制力を持って実行に移すことが重要であると感じました」と吉川氏は語ります。
5. 導入効果 : ボタン一つでレポート作成が可能になり、業務効率化を達成
現在は営業部門の94%がDomoを活用しています。吉川氏は、営業部門からの声が変わって行くのを目の当たりにしたと話します。当初は、Excelを使えないことの不満の声が多くありましたが、しばらくするとDomoの使い方についての質問が増えました。そして今は「Domoは使いやすい」という声が聞かれるようになったのです。「強制力を持たせることで、人の行動、会話が変わったことを感じます」と話します。
また、労働組合のアンケートからも働き方が変わったことを実感するそうです。以前は「会議の資料作成に時間工数を割いている」という不満が多かったのですが、2023年にその不満が無くなったのです。現場が変わったとわかる出来事でした。
吉川氏は自身の体験としても変化を感じています。以前勤務していた九州支店では、内勤担当者がレポート作成のために残業することが日常でした。しかし、久しぶりに訪れると、内勤担当者が終業時間で退勤していくことに驚きました。属人化されていたレポート作成がボタンひとつでできるようになり、残業が不要になったことで人件費の削減効果もあるということです。
もう一つの変化が営業部門で行っている1on1ミーティングの質が高まったことです。これまでは、上司が部下に営業活動の状況を聞き、客先訪問を増やすように指示するなど、勘と経験に基づくアドバイスが主流でした。現在は、SFAの営業記録をもとにDomoで個人のタッシュボードを確認し、テキストマイニングで活動のバランスを見て、よりよい活動が行えるようにアドバイスをしています。「アドバイスの質が上がれば、行動が変わり業績が上がり、持続的な成長につながると信じています」と吉川氏は話します。また数値が全社で可視化されたことで、新製品の売上を支店間で競いあうような動きもあり、活気が出てきています。今後はさらにデータから流通構造を整理して、中期経営計画を踏まえて選択と集中をしていきたいと吉川氏は話します。
Domoに経理システムも連携したことで、これまで使っていた統合基幹業務システムが不要になりました。これにより、経理担当者の活用も促進していく予定です。今後は、機器の生産系のデータなども取り込んでいきたいと並木氏は語ります。その際には営業部の成功体験を伝えることで、全部門に展開可能だと見込んでいます。
“デジタルに弱い企業でDXを推進するには、ある程度の強制力が必要です。そして、経営層の理解を得る、支店長を巻き込む、キーマンとなる担当者を動かすというように段階的にデータ活用を推進することで、全社にDomoを浸透できました。このやり方は他の企業でも有効なアプローチの一つになると考えます”
“Domoを日常的に活用して、営業が自分の担当分を見るだけでなく、視座高く俯瞰して見られるようになれば、戦略的な業務が可能になります。積み上げのフォアキャスティングだけでなく、未来からのバックキャスティングで考えられる人材が増えていくと期待しています”
※記載内容は2024年9月に行なった取材内容に基づくものです。