次世代型ビジネスモデルの変革には 全社レベルでのデータ活用が必要だった
Domoの導入と社内浸透にあたっては、
経営者のリーダーシップ、
そして業務現場で働く、
モチベーションの高い若手従業員が
協力してくれたことが大きな推進力になりました。
津川 陽平氏
マーケティンググループ マーケティング開発部 部長代行
50周年を迎え、データドリブンな会社に変革する日本サニパック
1970年創業以来、一貫して高品質なポリ袋・ごみ袋の製造販売を行う日本サニパック。インドネシアの自社工場で製造しており、一般消費者向け製品から、業務用製品まで安定した価格で提供しています。
2020年に創業50周年を迎え、同社の井上充治社長は今後50年先を見据えてDXによる次世代型ビジネスモデルの変革を打ち出しました。さらに、社長直下にマーケティンググループを創設し、コーポレートブランドのリニューアルを行い、ビジョン、ミッション、バリュー、スローガン、ロゴを刷新しました。
DX推進に不可欠な「データアンバサダー」の存在
Domoが「データアンバサダー」として表彰した津川陽平氏は、マーケティンググループが新設されたことを受け、2019年10月に入社しました。前職での経験を活かし、オウンドメディアやSNSを使ったデジタルマーケティングの施策に加え、全社レベルでのデータ活用の普及や定着化に尽力しています。
「マーケティング部門が新設されたためゼロからのマーケティングデータ収集が必要でした。オウンドメディア、SNS、広告など収集できるデータが大量にあるので、一括で管理、可視化できる、最適なBIツールの検討を開始しました。2020年6月にコーポレートサイトの刷新が控えており、旧サイトとの比較できるようにデータの収集を1月から開始していました」
津川氏はDomoの利用が初めてでしたが、他ツールと比較してUIがわかりやすくて誰でも使いやすく、データ連携がしやすい点を評価しました。Domoの導入にあたっては、3フェーズに分けて推進したと津川氏は話します。第1フェーズでは、マーケティンググループのデータ分析として試験利用しつつ、小さな成功を積み上げて、Domoの効果が社内にわかるように働きかけました。
経営層の後押し
「当時、マーケティンググループは社長直属の部署だったので承認はすぐに得られました。社長自身が『朝一番に最新データをチェックできる』という環境を望んでいることもDomoで実現できます」第2フェーズでは、全社展開を見据えて他部門での導入推進を行いましたが、実はこのフェーズでは思うような成果得られませんでした。
「部長職以上の管理職にDomoのアカウントを発行しましたが、自然にデータを見る習慣や活用する意識は広がりませんでした。アカウントを付与しただけでは、思い描いていたような全社展開のデータ活用は全く進まなかったです」その後、社長のリーダーシップのもと、各部門の先鋭メンバーからなるサプライチェーンマネジメント(SCM)兼DX推進部が結成されました。ここでは、マーケティング・営業・調達・生産・物流在庫など各部門で抱えていたデータをDomoで連携、一元管理し、可視化、分析をして全社レベルでのデータ活用を目指しました。そのチームメンバーには、データアンバサダーとして活躍す津川陽平氏も含まれていました。
社内の情報格差をなくすため、誰でもわかるダッシュボードを構築
津川氏は第3フェーズとして、社内の情報格差をなくすため、Domo上に「全社進捗状況」ダッシュボードを作成し、事業の年間進捗状況、各部署のKPI、経済市場動向、売上状況、マーケティング活動状況、お客様の問い合わせ状況などを、誰でも素早く会社の進捗状況をリアルタイムに把握できるようにデータを公開しました。さらに「商品情報」では、800種類以上の自社製品のスペック、そして販売状況から商品に対するお客様からのコメントを網羅し、誰でも簡単にドリルダウンや分析ができ、部門に関わらずアイデア出しやアクションが取れる環境を整えていきました。「最初に800以上ある商品データ、販売店データ、売上データを連携し、商品ごとの売上がいつどこで生まれているのかわかるようにしました。Domoを導入する前は、営業担当者がそれぞれ、BIツールを使って手作業で販売データ抽出、ダウンロードし、Excelで集計、グラフ化を行っていました。営業部員は、昨日何が一番売れたのかを知っているかもしれませんが、他の人は知りません。そこで会社全体の情報格差をなくすために、全員がその日の朝に、昨日の売上げ金額、ランキングなどにアクセスできる環境を用意しました」
社内の浸透を推進するために、オリジナルの教育プログラムを実施
ダッシュボードを構築後、2022年6月から3回に分けてDomoの全社説明会を開催しました。説明会の内容、資料などはすべて津川氏が企画し、当日の受講者のサポートは部下が行いました。
「Domoの見方、アプリの使い方、ログインから始まり、ダッシュボードの編集、アラートの使い方まで基本的な機能について3回の講座を通して理解してもらいました。工夫したことは、途中で『昨日の45リットルゴミ袋の売上は?』といったクイズをはさみ、Domoで調べてアンケート機能を使って回答してらうことです。これにより、全員がアプリをインストール、ログインしますし、実際にダッシュボードを見て調べることになります。特定の商品の昨日の売上がすぐにわかる、ということを体験してもらう設計にしました」
さらに、今後一緒にダッシュボードを構築していく人を募集しました。若手社員を中心に全9部署のうち5部署から参加希望者が合計8名集まりました。彼らに向けて、10月からドーモ社員が講師となって、高度な活用方法の講座を4回開催しました。立候補したメンバーは、モチベーション高く取り組んでいます。
「今は彼らと一緒に新しいダッシュボードを次々に作成しています。デフォルトで設定している『全社進捗状況ダッシュボード』では、売上目標と実績、原料価格、為替などの経済状況、マーケティング活動の目標と実績、お客様からのお問い合わせ内容、生産状況、在庫状況などを表示しています。ダッシュボードの構成は、最初に重要な情報を表示して、誰が見ても分かるようにストーリー性をもって作成しました。
津川氏はDomoのアクセス状況もダッシュボード化しています。それによればアクセス数は増加しており、モバイルからの利用が5割以上となっています。今後は、利用者数、アクセス回数をさらに上げていくために、それぞれの業務に必要なダッシュボードを若手社員と一緒に構築していきたいと考えています。
ファクトに基づく意思決定が徐々に浸透。さらに全社的な取り組みへ
マーケティング部門では、目標に対する進捗をダッシュボードを見て把握し、業務改善を行うことが定着しています。Webサイトのアクセスが急増した時はアラート通知し、何が話題になっているかすぐに把握できるようにしています。リニューアル前と比較してWebサイトのアクセス数は14倍となっており、マーケティング施策が効果を上げています。
「日本サニパックでは、SPIRITという五つの行動指針があり、一番に掲げられているのが『ファクトを大事にする。』で四番目が『改善をつづける。』です。このSPIRITに基づいて行動するにもDomoは欠かせないツールとなっています」
津川氏は、社内にさらに普及させるための取り組みとして、マーケティング部門のダッシュボードをiPadで常に切り替わりながら表示するようにしています。通りがかった人が興味を持つこともあり、データドリブンな社風づくりの一歩と捉えています。これからDomoを導入する企業に向けて、津川氏は次のようにアドバイスします。「Domoはいろいろなデータを可視化できますが、最初はリソースや費用を抑えるためにも、ミニマムスタートで始めて社内への浸透を少しずつ進めると良いと思います。日本サニパックでは、社長のリーダーシップと若手社員たちの意欲によって、全社的な活用に広がっています。まずはデータを可視化するメリットを伝えて、推進する人を増やすことです。そうすれば、データ活用の輪が広がり、人材育成も改革も進むでしょう」