経営会議、商品企画などにデータをフル活用。Domoの利用が増えるに連れ業績も向上
(経営層・営業編)【前編】
※【後編】マーケティングでの活用事例はこちら。
1.ビジネス背景:データ活用で顧客にあわせた商品提供をしたい
データの利活用を行い、様々なデータから顧客ニーズを読み取り、顧客一人ひとりのニーズに合った金融商品・サービスの開発につなげ、ビジネスチャンスの拡大を図りたい。そして金融業界での競争力を高めていきたい。
2.導入前の課題:データの分散、属人化により集計に時間がかかる
社内にデータが分散しており、日次営業レポートや経営会議用資料を作成するのに時間がかかっていた。データが属人化していて人によってデータの定義が異なることもあった。Excelを利用して作業をしていたが、マクロが複雑化していた。
3.なぜDomo?:銀行が求める高度なセキュリティ要件に合致
Domoは銀行が求めるセキュリティ要件を満たしたエンタープライズレベルのセキュリティ機能と管理機能を備えていることに加え、様々なSaaSサービスのコネクターを持っており、将来的な拡張性が高いことから導入を決めた。
利用率向上のため、Domoのトップページを複数回に渡って改修し、見やすく改善した。経営層の利用が進み、データアナリティクス部門からのボトムアップのアプローチに、トップダウンのアプローチが加わり、Domoの活用が全社に浸透した。
新聞社からの依頼で外貨預金取引状況に関するデータを即座に用意できたことから、新聞に社名が大きく掲載され新規顧客増につながる。他にも、営業レポートの作成効率化や、顧客データを元にした商品開発による売上伸長など、データ分析が事業好調を牽引している。
“直近の3年間で特に外貨預金の残高において当行のシェアが伸びています。他行が軒並み外貨預金が減少している中で、過去最高シェアの約9%となっており、業界全体の残高数が2割減のところ、当行はほぼ横ばいとなっています。データ活用により顧客ニーズに合わせた商品開発を行うという当初の目的の成果の表れとしてとらえています。Domoの利⽤増加に伴い、2018年と比べて2022年の業務粗利益は65%増加、経常利益は122%増加しており、営業業務の改善の成果ととらえています”
1.ビジネス背景:データ活用で顧客にあわせた商品提供をしたい
ソニー銀行では、他行との差別化戦略としてデータ分析を通して顧客理解を深め、顧客一人ひとりのニーズに合った金融商品・サービスの開発につなげ、ビジネスチャンスの拡大を図ることを目指しています。
「2018年の事業計画でデータ分析に基づく意思決定をする会社に変革することを掲げ、データ活用促進を目的とした専門部署であるデータアナリティクス部が立ち上げられました。当初、3名からスタートしたデータアナリティクス部は、現在14名のチームに成長しています」と話すのは、現在データアナリティクス部で部長を務める伊達 修氏です。
2021年4月からデータアナリティクス部に所属しており、データの民主化推進やDomoのダッシュボード作成を担当する佐藤 加奈子氏はデータアナリティクス部の仕事について次のように説明します。
「データアナリティクス部門の役割は、主に社内のデータ利活用に困っている人をクライアントとして、どういうデータを見たいのか、活用したいのかというニーズとビジネス課題を把握したうえで、データ分析を実施し、次のActionに活かせるデータおよび知見を提供・共有することです。現在は、外貨預金、住宅ローンなどの商品ごとにデータアナリティクス部の担当者がいて、それぞれの商品担当と密にコミュニケーションを取り、分析業務を実施しています」
2.導入前の課題:データの分散、属人化により集計に時間がかかる
データ活用を促進するという戦略があったものの、セキュリティ上の制限による部門別のデータ管理により、会社横断でのデータ活用が進まない、データが散在している、データ管理方法が人によって異なるなど、課題が山積みだったと二人は振り返ります。
「金融商品別の日毎の営業活動のデータは、情報系システムに登録されています。日次の報告書資料の作成のために、情報系システムからデータをインポートして、マクロを組んだExcelで集計していましたが、長年使っているマクロのため、期待通りに動作しないことがあり、作成までに半日かけていました」(伊達氏)
「役員が出席する経営会議では、営業報告のレポートが使われます。Domo導入以前、私はこのレポートをExcelで作成していました。まず、データを収集するところから始まりますが、属人化しているので担当者が不在、あるいは退職してしまうと、データが集められませんでした。さらに、人によって報告する数値の定義が異なることがありました。そのため、営業報告レポートと他の資料で数値が異なることがあり、合致させるために苦労しました。月に1回のレポート作成に1週間以上かかっていました」(佐藤氏)
新商品の追加があると、既存のExcelでは対応できずに、新たにプログラムを書いて対応していたため、さらに処理が複雑化していたと伊達氏は振り返ります。
3.なぜDomo?:銀行が求める高度なセキュリティ要件に合致
データ活用に関する山積みの課題に対応するため、データ活用プラットフォームの導入を検討することになりました。当時を振り返り伊達氏は次のように導入理由を説明しています。
「厳格なデータ管理が求められる銀行業界では、行内全体のデータの流れを可視化し、安全に整備する事が求められています。Domoは銀行業のデータセキュリティ要件を満たしつつ、データ活用が出来る可能性があると考え、導入を決めました。また、1,000以上のコネクターも備えているので、データへの広い汎用性も期待できます。今後は、より多様なデータを連携させ、ソニー銀行全体でDomoを活用していく予定です」(伊達氏)
Domoのプラットフォームは、エンタープライズレベルのセキュリティ機能と管理機能を備えています。さらに導入決定までに、様々な監査やアセスメント、コンプライアンスチェックを実施し、クライアントの要件や規制を満たしていることを確認しました。
4.定着化:経営層がDomoを積極的に活用し、社内に浸透
データアナリティクス部は、人によって異なっていた集計データの定義を統一することから始めました。その上で、データアナリティクス部でデータの集計を行い公開した数値を正式なデータとしました。
「これまでバラバラに使われていたデータを、データアナリティクス部で管理する中央集権型での運用をしています。データ集計の結果は、Domoに集約し、いつでもブラウザで見られるようになりました」(伊達氏)
2021年以降、データアナリティクス部門にて、トップページのデザインを複数回改修したり、グラフのデザインを統一したりして、よりDomoの表現力を向上させ、利用率を高めています。
「公開しているダッシュボードの一覧をトップページに掲載したことで、全体が把握でき、トップページからワンクリックで、目的のページに到達できるようになりました。一覧が文字だけでは見にくいので、カテゴリにアイコンを追加して見やすくしています」(佐藤氏)
トップページを改修したあと、ユーザーに操作性についてアンケート調査を行ったところ、概ね好評でした。その後の利用状況も改善しています。
「アンケートは役員にも実施しました。そのような取り組みをきっかけに役員もDomoのダッシュボードに注目するようになり、全社的にDomo活用が推進されるようになりました。経営層が見ていることで、Domoでデータを確認する文化が形成され、今は、営業部門は新聞をチェックするように、毎日Domoで営業データを確認して、活動に活かしています」(伊達氏)
「役員定例会の営業部門の報告では、Domoの画面を投影して説明がなされ、役員間での情報共有も活発に行われています。期間の変更や、項目の深掘りなどがその場でできるので、他の役員の関心も高まり、利用が促進されました」(佐藤氏)
<トップページデザインの変遷>
5.導入後の効果:データ活用が定着するに連れ、業績も向上
Domoを導入してから、営業の日次データ、経営会議のデータ作成はほぼ自動化されました。
「セキュリティの関係で、情報系システムのデータをエクスポートした後、顧客情報などを削除したデータを毎朝手動でDomoにアップロードして、営業の日次データを作成しています。これまでの作業に比べて作業時間を約87%削減できています。リアルタイムでのデータ閲覧も可能になり、データの精度も高まっています」(佐藤氏)
企画部門では、Domoのダッシュボードのデータを確認して、次の企画を行うことが定着しました。
「最近入社した方から『データがなかったころはどうやって企画をしていたのですか?』と不思議がられるほど、Domoのデータを見て考えることが当たり前になっています」(伊達氏)
主要なデータが常にダッシュボードで確認できるようになり、急なデータ提供依頼にも対応できるようになりました。
「広報から外貨預金の動向について、急ぎでデータが欲しいという依頼がありました。もともと外貨預金の残高、申込み件数、口座数などは営業部のKPIとしてダッシュボードにありましたので、短時間でデータを提供でき、翌日メディアにソニー銀行の社名とともに内容が掲載されました。この影響で、外貨預金の新規口座開設申し込み件数が通常に比べて40%増加となりました」(伊達氏)
「直近の3年間で特に外貨預金の残高において当行のシェアが伸びています。他行が軒並み外貨預金が減少している中で、過去最高シェアの約9%となっており、業界全体の残高数が2割減のところ、当行はほぼ横ばいとなっています。データ活用により顧客ニーズに合わせた商品開発を行うという当初の目的の成果の表れとしてとらえています。Domoの利⽤増加に伴い、2018年と比べて2022年の業務粗利益は65%増加、経常利益は122%増加しており、営業業務の改善の成果ととらえています」(伊達氏)
“現在は営業部門とデータ部門では役割が明確化し、データに関する業務は主にデータ部門が行っているので、その分営業部門は営業戦略や企画に時間を割くことができています。営業部門から『こんなデータを見たい・分析してほしい』という依頼が増えていて、期待されていることを実感します”
※記載内容は2023年8月に行なった取材内容に基づくものです。