データ分析ソリューションにDomoを採用。データ分析から3PLの受注につながることも【後編】
※【前編】DomoでDX人材を育成し、データドリブンな組織へ変革している事例はこちら。
物流業界全体の傾向として、一部の領域を除きDXが進まないという課題がある。物流業界には膨大なデータがあるものの、そのデータを活用して新しいビジネスチャレンジができている企業は、グローバル企業を含めてほぼないというのが実情だ。
物流業界でデータ分析を定着させるためには、分析可能な形でデータを保存し、閲覧・分析できるようなデータ基盤が必要だった。社内で、データ分析の知見を溜めつつ、顧客にデータ分析ソリューションを提供していくことを目指した。
3.なぜDomo?: BI機能を評価して導入。後にDomoのフル機能を活用
BI機能として可視化に優れていることを評価してDomoの導入を決定し、データプラットフォーム、ETLは別のシステムを利用。1年後に、Domoをワンストップで活用するように。お客様とセキュアに情報を共有できるDomo Everywhereでお客様毎に最適なダッシュボードを作成。
4.サービスでの活用: 顧客に提供するデータ分析サービスをDomoで構築
同社が顧客企業に提供するCO2排出量可視化サービス「EcoLogiPortal」は、Domoを基盤として構築し、Domoのダッシュボードを使っている。全体像を把握し、ボトルネックを把握するのに最適だ。
5.導入後の効果: データ受領から分析データ提供までのスピードを最大97%短縮
Domoを利用する以前は、CO2排出量の全体像を捉えるまでにデータ受領から2ヶ月かっていたが、現在では最短で2日、長くても1週間で対応できるようになった。
1.ビジネス背景: データは膨大だが活用に至らない
物流業界のDX推進状況について、ロジスティード株式会社 DX戦略本部 SCイノベーション部 部長補佐 半澤 康弘氏は次のように話します。
「グローバルも含めて、全体的に進んでいません。EC物流など一部の領域はDXが進んでいますが、それでも物流の情報をマーケティングなど関連分野に活かすといった活用は、大手ECプラットフォームですらできていません」
物流に関連するデータはあるものの、それを活用できていない背景について、次のように分析します。
「データは使う用途があって生きるもの。使おうという意志、ビジョンがあるかどうかが活用度合いを左右します。国内企業に関しては、物流部門が他の部門に比べて発言権が弱い傾向があります。物流データを、購買、マーケティングなどに連携させて、在庫管理の最適化や販売促進に活用できるのが理想ですが、成功している事例が少ないのが実情です」
こうした背景には、日本企業全体がコストを下げる方向に集中しすぎて、新しい価値を生み出す方向に投資できないという背景があると半澤氏はみています。特に、人口ボリュームが多い団塊ジュニア世代がビジネスの中心となる中で、チャレンジングな方向よりも、確実で安定した方針を採用する傾向があります。
「日本企業も物流のコスト最適の重要性を理解している物流部門の出身者が、経営の意思決定をする立場になれば、物流のDXは一気に進むでしょう」
2.導入前の課題: 業界共通のデータの課題への挑戦
物流業界には大量のデータがありますが、このデータをビジネスに活用できている企業はほとんどないと半澤氏は見ています。
「物流に集まってくる膨大なデータは宝の山です。適切に活用ができれば、様々な部門で効果が期待できます」
物流業界で、いち早くデータを蓄積し業務改善に活かせるようになれば、競争力を高められ、同じ課題に直面する顧客にソリューションとして提供できると半澤氏は考えました。しかし、社内でもまだデータ活用は道半ばであったため、社内のデータ活用を推進させつつノウハウを蓄積し、顧客へのデータソリューションの提供まで可能なデータ基盤の構築が必要でした。
「物流業界でデータ分析を活かせるようにするには、膨大なデータを長期的に活用できる形で集計し、保存すること、そして現場で働くデータ人材がそのデータを自由に閲覧、分析できるような環境が必要でした。他社でもおそらく同じ課題を抱えているため、ロジスティードが先行してDXを進めれば、成功パターンをサービスとしてお客様へ提供できるようになり、3PLとして差別化できると考えていました」
3.なぜDomo?: BI機能を評価して導入。後にDomoのフル機能を活用
導入検討時、データ収集・蓄積については堅牢性と正確性を重視したシステムを、データ抽出する部分は柔軟性とスピードを重視したシステムをそれぞれ導入することになりました。そして、データの可視化と分析のためのツールとして、BIツールを複数検討した中で、Domoが候補の一つとなりました。
「複数の製品を比較検討する中、ある製品はサーバーを自社で構築する必要があって運用コストがかかる、別の製品はBIとしての機能が劣るといった点から、候補から外しました。Domoは、ビジュアライゼーションで際立っており、柔軟で多様な表現ができることを評価しました。データを見る人が好奇心と共感を持って、日常的にデータと接することができると考え、導入を決めました」
当初、BIの機能性で導入したDomo。しかし利用するうちにDomoがワン・プラットフォームである利点に気づきました。
「Domoであればデータ収集・蓄積ができるストレージ、データ抽出するETLもそろっているので、分析・可視化までワンストップでできます。気づくのに、導入して1年かかってしまいましたが、Domoにまとめてからはスピードが一気に上がりました。複数プラットフォームを契約して運用コストが嵩んでいた部分も削減できました」
なお同社では、サプライチェーン最適化サービス「SCDOS」を提供しています。DX戦略本部は、データ活用の専門家組織として、顧客のニーズに合わせたデータソリューションを提供することで、他社との差別化を図っています。
「顧客のデータを使って、ダッシュボードで全体像を示すのに、Domoは最適なツールです。Domoを通して、お客様の業務データ、経営系のデータを連携することで、需要予測や在庫と輸送のバランス管理など高度な分析が可能になります」
「なお、外部にサービスを提供する上で、Domo Everywhereが役立ちました。Domo Everywhereはダッシュボードをお客様ごとにカスタマイズしてセキュアに提供できる機能で、お客様と共に課題を克服し新たな価値を生み出す共創には欠かせません。また、Domoのサポートも頼りになりました。困った時に質問できるので、心強いです」
4.サービスでの活用: 顧客に提供するデータ分析サービスをDomoで構築
SCDOSは、Domoを含めて複数のシステムで構築したデジタル基盤に、同社がこれまで手掛けてきた1200社以上のオペレーションノウハウを集約しています。バラバラのデータを収集し、価値ある情報に変換し、顧客のサプライチェーンの高度化、最適化を支援します。
「サービスの一つである『EcoLogiPortal』は、CO2排出量可視化に特化しています。データ収集、データの標準化(クレンジング)、データの可視化まで、Domoのプラットフォーム上でワンストップで実現しています。顧客が閲覧するダッシュボードも、Domoの画面です。
EcoLogiPortalでは、まずスピーディにCO2排出量の全体像の把握ができます。これにより、ボトルネックがどこにあるかが把握できるので、さらにその部分を深掘りして課題を特定でき、改善のための次のアクションにつなげられます」
具体的には、CO2排出量の推移を地域別、輸送モード別、商品カテゴリ別など、様々な視点や角度で可視化できます。原単位分析を使えば、CO2排出量の削減効果を正しく追跡できます。さらに、削減シミュレーションを使えば、モーダルシフト(自動車から船舶、鉄道への輸送方式に転換すること)を実行した場合の削減効果を可視化できます。
5.導入後の効果: データ受領から分析データ提供までのスピードを最大97%短縮
EcoLogiPortalのシステムをDomoでワンストップで提供するようになって、データ提供までの時間が大幅に短縮できるようになりました。
「以前は、物流データ受領、モデルの作成、提案まで2ヶ月かかっていました。Domoを使うようになって、その期間が最短2日、データが複雑な場合でも1週間に短縮でき、圧倒的なスピード感を実感しています。テンプレートを用意しているので、データを取り込めばすぐに対応できます。
現在、物流センター系の倉庫モニターなどの分析サービスについても同様のスキームでサービス提供できるように準備しています。標準テンプレートがほぼ完成していて、現在いくつかのユースケースで試しているところです。こちらは、自社で利用しているサービスを横展開するような形になります。ここでも、データ受領から分析結果の提供まで10人月かかっていたところが2人月になり、1/5の工数でサービスを提供できています」
他にも、SCDOSでは、輸送効率化、生産性改善、品質管理、国際輸送最適化など、サプライチェーン全体の効率化、最適化につながる施策を展開できます。
「国や消費者から環境配慮型経営が求められている他、ドライバーの高齢化による人材不足、輸送量の増加など、物流業界の環境は複雑化しています。こうした変化に対応するためには、ばらばらのデータを集約し、価値ある情報に変換し、物流戦略の意思決定から、現場オペレーションの変革までに活用していかなければなりません。Domoは、SCDOSが高速にデータを処理し、可視化分析の精度を向上させるためになくてはならない存在です」
<EcoLogiPortal>
※記載内容は2023年6月に行なった取材内容に基づくものです。